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着替えようと試着室に入った私は気絶しそう。
原稿を必死で書き、電車にとび乗って劇場へ向かった。
ズーズー弁に3時間とり囲まれ、ここに来てみれば髪はポサポサ、黒いセーターには毛玉と猫の毛がこびりついている。
そこへいくとDの広報の女性とかお店の人は、私とはまるで別世界に住む人だ。
ピンクと白のお店の中でもぴしっとして隙ひとつない。
やはり美人服の威力だと私は思った。
私とここのコンセプトはまるで違うんだ。
でももう後には退けない…。
そして服の貸し出しが嫌いな私は、そのスーツを買いました。
合わせる靴を持ってないからピンクの靴も買いました。
男の人とデイトする時に着ようーつと。
「V」とに出てくる女の人みたいに、私もこれを着たら男の人に大事にされるかしらん。
こんな予感をおぼえるのは初めての体験だ。
2年前のこと、私はチューリッヒで、ダナのイブニングドレスを買った。
ちょうど冬のはじまりの頃で、「クリスマスパーティーに行くか、もしれないし…」などといいわけして買ったのであるが、考えてふるとイブニングドレスを着ていくバーティーなんて、一度も行ったことないじゃないか。
が、自分で言うのもナンであるが、その黒いイブニングドレスはわりと私に似合った。
襟ぐりの大きいところも悪くない。
化粧品会社からサンプルでいただく美容液をたっぷり塗りたくった結果、私のデコルテはかなり白く艶やかになっていたからである。
「Hさん、すっごく似合う。こういうの日本人にはなかなか着こなせないわよねえ…」「Hさんは背が高いから、すっごくいいですよ」同行の女性2人も口々にお世辞を言ってくれる。
が、そして2人は同時にこう言った。
「だけど、着る前にダンベルをやるべきですよ…」二の腕をむき出しにするのは、あんまりだということらしい。
そんなこと他人から言われなくたって、鏡というものがある。
首から肩がすっかり出ているこのドレスを試着する際、ひょいと横を向き私は樗然とした。
二の腕の幅と、私の横から見た体の幅とがほぼ同じではないか。
服の下は3重にぶよぶよとなって、ドレスの布からはみ出しているのである。
そんなわけで私はそのドレスを一度も着ていない。
いや、1回だけニューヨークのM劇場に行く時だけ着ていったかしらん。
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